概要
近年、金属部品の成形には機械加工、精密鋳造(ロストワックス)、ダイキャスト、プレス焼結など、部品に求められる機能やコスト面から、様々な加工技術や方法が選択され採用されています。これらの加工技術に第五世代の全く新しい加工技術として開発したMIM(Metal Injection Molding)プロセス「メタモールド」は、長年培ってきた冶金技術をもとに、省資源、省エネルギー型でありながら、プラスティック製品、ダイキャスト製品と同様の複雑形状部品の製造を可能にしました。
※メタモールドはNPRの金属粉末射出成形製品(MIM製品)の登録商標です。
メタモールドプロセス
1.混練
金属粉末とバインダー(ワックス+樹脂等)を均一に混練します。
2.造粒
成形性を良くする為に、ペレット状に加工します。
3.射出成形(射出成形機)
プラスチック製品と同じように、射出成形を行い、成形品を作製します。
- 金型
- 焼結後は、10~20%縮みますので、焼結時の縮み代を計算し、製品寸法より大きい金型を作製します。
4.脱バインダー(脱脂炉)
加熱して、バインダーを除去します。
5.焼結(連続式焼結炉)
焼結することにより、相対密度が95%以上の高密度焼結品が得られます。
6.検査・出荷
必要に応じて後加工(熱処理、メッキ等)を施し、検査の後、梱包・出荷します。
メタモールド特長
1.複雑形状品を一体成形することで、低コスト化が実現します
メタモールドは、プラスティック製品やダイキャスト製品と同様に複雑形状の製品を種々の金属で大量生産することを可能にしました。あらゆる分野の複雑形状部品の製造に対応でき、一体成形を可能にしたことで低コスト化が実現できます。
2.デザイン・機能を主体とした自由度の高い設計が可能です
3.高密度・高強度など優れた特性を約束します
メタモールドは、原料に微細粉末を使用することで、相対密度が95%以上の焼結体の製造を可能にしました。機械的特性、耐食性、磁気特性にも優れ、最大表面粗さも、焼結上がりで6S程度が可能となりました。
メタモールドと従来粉末冶金品の組織比較
- メタモールド
- 空孔が球状で独立し、高密度なため機械的特性に優れる。
- 粉末冶金品
- イレギュラーな空孔が粒界に沿って存在し、低密度なため機械的特性が劣る。
4.優れた寸法精度が自慢です
バインダーによって金属粉を金型キャビティに流し込む成形法のため、内部応力や粉末充填密度が均一になります。その結果、等方的に収縮し、高精度の寸法(±0.5%以下)が得られます。
5.様々な加工処理が可能です
複雑化するクライアントニーズに対応するため、タップ加工、各種研摩加工などの機械加工、焼き入れ焼き戻し、真空熱処理、メッキ、潤滑剤処理などの各種処理が可能です。
材料特性と用途
材料名 | 材質 | 特性 | 用途 |
---|---|---|---|
低合金鋼 | Fe-Ni-C | 高強度、高靭性 | 自動車・ミシン・銃 |
Fe-Cr-C | 高強度、耐摩擦 | 電動工具、油圧機械、楽器 | |
SNCM,SCM | 耐衝撃 | 鍵、自動車 | |
ステンレス鋼 | SUS316L | 耐(孔)食 | 釣具、OA機器、時計 |
SUS630 | 高強度、耐食 | OA機器、医療部品 | |
SUS410L | 電磁気特性 | 電磁部品、バルブ | |
SUS444 | 電磁気特性 | 電磁部品、バルブ | |
SUS440 | 高強度 | 時計、医療部品 | |
SUS262 | 耐アレルギー、高強度 | 時計、理容 | |
SUS420J | 高強度、耐食 | 空圧機械 | |
SUS440C | 耐摩擦、耐食 | 紡績機、刃物 | |
チタン | 純 Ti-Ti合金 Pure Ti, Ti alloy |
耐食、軽量 | 時計、理容 |
その他 | スーパーアンバー | 低熱膨張 | AV機器 |
コバール | ガラスに近い熱膨張 | 計測器 | |
超硬合金 | 高硬度、高耐食 | 鍵、時計 | |
ヘビーアロイ | 高比重 | 分銅 |
機械的特性
材料名 | 材質 | 引張強度(MPa) | 伸び(%) | 硬度 他 |
---|---|---|---|---|
低合金鋼 | Fe-Ni-C | 1000-1800 | 2~10 | HRC 30-50 |
Fe-Cr-C | 1000-1800 | 1~7 | HRC 30-60 | |
SNCM | 1120 | 3 | 表面硬さHv 650~700 | |
ステンレス鋼 | SUS316L | 530 | 40 | |
SUS630 | 1300 | 10 | 時効処理後HRC42 | |
SUS410L | 380 | 45 | ||
SUS444 | 450 | 35 | ||
SUSXM27 | 570 | 25 | ||
SUS420J | 1000 | 8 | HRC ≧40 | |
SUS440C | − | − | HRC ≧50 | |
チタン | 純 Ti Pure Ti | 555 | 15 | Hv 150-240 |
Ti合金 Ti alloy | 780 | 5 | Hv 260 | |
その他 | コバール | 540 | 30 | |
超硬合金 | − | − | Hv 1600-1800 | |
ヘビーアロイ | − | − | 比重 18 |
設計のポイント
呼び寸法(mm) | 一般公差(±mm) | 特別公差(±mm) | |
---|---|---|---|
寸法公差 | ≦10 | 0.10 | 0.03 |
10<L≦20 | 0.15 | 0.10 | |
20<L≦30 | 0.20 | 0.15 | |
30<L≦50 | 0.30 | 0.20 | |
50<L | 0.5% | 0.4% | |
角度 | 一般公差(±') | 特別公差(±') | |
0.5' | 0.3' | ||
表面粗さ | Rmax | <12S | 6S程度 |
インジェクターマーク | 0.05~0.1mm | ||
パーティングライン | 0.05~0.1mm |
※材料、形状により変わります。